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デキナイ理由を考えよう!?

「できない理由など考えてもしょうがない。どうしたらできるのかを考えなさい。」親や先生、あるいは上司にこんなことを言われたことのある人も多いでしょう。しかしながら、「よーし、なんでできないかを考えよう。」などと言われたことのある人はそうそういないでしょう。今回はどうしてできないかを一生懸命考えることになった子たちの話をしたいと思います。

中学生の子たちは先月学年末の定期考査が終わったため、しばらく続いていた緊張感から開放され、定期考査直前の真剣な顔つきとはうって変わってその表情もゆるやかなものとなっています。その中学生の一人から「先生、これどうしてもできないんですけど…。」と一枚の紙を渡されました。見るとそこには四角錐の展開図のようなものが描いてありました。てっきり今回のテスト範囲に入っていた図形に関することだと思って、「これの何ができないの?」と聞くと「これ『一筆書き』できるらしいんですけどクラスの中でまだ一人しかできてなくて、何回やってもできないんです。」

この仕事をしているとこういった勉強とは直接関係のない質問をされることがあります。定期考査直後ということもあり、目先のことをあまり考えなくてよいので、少し問題解決力や思考力を磨いてもらうためにこれをみんなで考えてもらうことにしました。

まず最初にみんなが始めたことは、とにかく何度もあれこれ試すこと、つまり試行錯誤です。最初は勢いよく試していた子たちが、段々失速して「わかんない~」「無理~、○ファリパーク♪」「先生やってない、ずるい!」などと色々言い出すようになります。そこで「私はもう答え解ったよ。」と言うと、当然「どうやるの?」と聞いてきます。私が「これはできないよ。」と答えると、みんなは一斉に笑って「先生もできないんじゃん(笑)」という予想通りの反応でした。

「『デキナイ』っていうのは、私やあなたたちの頭が固かったりして、『できない』っていう意味じゃなくて、誰にもできえない、原理的に不可能っていう意味だよ。」と言うと、「なんでわかるんですか?」と一人が食いついてくれたので、「じゃあなんで『デキナイ』って言えるのか考えてみようか。」と言ってみんなに考えてもらうことにしました。(「え~、教えてよ~。」「ケチ」など色々言われましたが)

その後の生徒とのやりとりすべてを書くととても長くなってしまうので、子どもたちが『デキナイ』理由を見つけ出すまでの過程を箇条書きで書きます。

1.『デキナイ』と断言できるからには何か法則(ルール)のようなものがあるはずだ

2.一筆書きができる図形とできない図形(事例)をそれぞれたくさん集める(○△□などの図形から漢字やアルファベットなどの文字)

3.一筆書きができる図形に共通する点は何か

4.一筆書きができない図形に共通する点は何か

5.一筆書きができる図形と似ているのにできない図形は何か(日と目など)

6.一筆書きが行き詰るときはどういうときか、線と点で考える

7.一筆書きで次に進むには線の交点に対して「入る線」と「出る線」のセットが必要→点に対して偶数本の線が必要

8.出発点と終点の2つに限り奇数本の線でよい→奇数本の線が接続している点が3箇所以上あると一筆書き不可能

9.まとめるとどういう法則(ルール)なのか

私が『デキナイ』とすぐにわかったのは、かつて私自身がこの問題に挑んだことがあったからです。「(自分が)できないのではなく、原理的にできえないのだ」と自分の力で結論を導き出したときの喜びは非常に大きなものでした。勝手に大発見をしたと思っていたら、250年以上前にオイラーという数学者が「ケーニヒスベルクの問題」と呼ばれる問題でとっくに解いていたというオチは付きますが、考えるということの楽しさと自信を手に入れたできごとの一つとして今でも良い思い出となっています。

今回私は「答え」を知っていたわけなのですぐにそれを教えることもできました。しかしそれでは自分の力で考える力を育んであげることができません。知識の形で与えれば同じタイプの問題を解くという目的に関して言えば効率の良い学習法と言えるでしょうが、そういう学習ばかりやっているとこれからの人生や仕事の中で出会う、まだ誰も答えや解決法を知らない問題に対して積極的に立ち向かえるような人間には育ちにくいと思います。今は学生なので勉強という形で様々な「問題」にあたってもらっていますが、自分で考える力や自己解決能力を鍛えることで問題集で出会う問題とは違った「問題」にも同じように立ち向かって、切り開いていけるような人にしてあげたいと思っています。